次に、実は集合は書き並べる必要は無いのだという話をしたい。 最初に集合というのは基本的には書き並べることだといったが、 実際には次のように書くことが多い。 A = { x | x が満たすべき性質 } これは x が満たすべき性質を満たすものは全部 A の元であるということである。 こう書くといったいに何がうれしいのか、それは次の例を通してみていきたい。
N = { x | x は自然数} Z = { x | x は整数} Q = { x | x は有理数} R = { x | x は実数} C = { x | x は複素数}
ここから見えてくる書き並べなくてもいい記法のうれしさを見ていこう。 ・どの集合も元が無限個あって書き並べるのは無理だが、この書き方ならかける ・割とすっきりと書ける(ことが多い)。 ・あ、そういえば突然N, Z, Q, R, C 使いましたが、それは数学の慣例です。 全て英語またはドイツ語の頭文字から来ています。そしてこれからも使います。
3 和集合と共通部分 A, B を集合とする。このとき次の概念が定義される。 A∪B = { x | x ∈ A または x ∈ B } を A と B の和集合(union) といい、 A∩B = { x | x ∈ A かつ x ∈ B } を A と B 共通部分(intersection)という。 高校では分かりやすくVenn図を使うことが多い。
定義:(単射、全射、全単射) A, B を集合とし、f : A → B とする。 このとき 1) f が単射である ⇔ a, a' ∈ A かつ a ≠ a' ならば f (a) ≠ f (a'), 2) f が全射である ⇔ 任意の b ∈ B に対して,ある a ∈ A が存在してb = f (a) とあらわせる, 3) f が全単射である ⇔ f が全射かつ単射である
f が全射であることを言い表すのに、 f (A) = { f (a) ∈ B | a ∈ A } ( f の像という) という表記法を使うと便利なことが多い。 >>29で | の左側には単に x だけ書いていたのに、今では f (a) ∈ B などと書いている。 これは同時に ・f (A) の元は全てある a ∈ A が存在して f (a) とあらわせる ・B の部分集合である という2つのことが述べられる便利な略記法なのである。
単射、全射、全単射について大まかに言っておこう。 単射とは A の元が f により増減無く丸ごとうつせることを意味している。 さらにこれは行き先が常にバラバラであることも意味している。 全射とは B の情報が f によって捕らえられることを意味している。 全単射は A と B の元は一対一に対応することを意味する。
∵) f : A → B を単射、g : B → A を単射とする。 f (A) ⊂ B に対して、B_1 = B - f (A) とおく。 以下、A_n = g (B_n), B_[n+1] = f (A_n), (n ∈ N) とおく。 その上で、 A_[*] = ∪_[n ∈ N] A_n, A^[*] = A - A_[*], B_[*] = ∪_[n ∈ N] B_n, B^[*] = B - B_[*] と定める。 このとき、 f (A^[*]) = f (A) - ∪_[n ∈ N] f(A_n) = f (A) - ∪_[n ∈ N] B_[n+1] f は単射でかつ B_1 = B - f (A) より f (A) =B - B_1 なので、 f (A^[*]) = B - ∪_[n ∈ N] B_[n] = B - B_[*] =B^[*]. また、 g (B_[*]) = ∪_[n ∈ N] g (B_n) = ∪_[n ∈ N] A_n =B_[*]. よってそれぞれ f は A^[*] から B^[*]への全単射であり、 g は B_[*] から A_[*] への全単射で特にこの B_[*] から A_[*] への全単射は 元が一対一対応していることから、A_[*] から B_[*] への全単射が作れる。 それを g^[-1] とおいて、写像 F : A → B を a ∈ A が a ∈ A^[*] ならば F (a) = f (a) とし、a ∈ A_[*] ならば F (a) = g^(-1) (a) と定めれば F が A から Bへの全単射である。 ■
例: a, b ∈ R, a < b とする. A = { x ∈ R | a ≦ x ≦ b }, B = { x ∈ R | a < x < b }とおく。 このとき, f : A → B を f (x) = (1/2)x + ( a + b )/4 , x ∈ A と定め、 g : B → A を g (x) = x と定めるといずれも単射。 よって、カントール・ベルンシュタインの定理よりA から B への全単射が存在する。
定理:(線分上の不動点定理) f : [a, b] → [a, b] を連続関数とする. そのときにある c ∈ [a, b] で f ( c ) = c となる点 c が存在する.
(証明) g (x) = f (x) - x として[a, b]上の関数 g を定める. 仮定より g は連続関数である. ここで, a ≦ f (a) ≦ b, a ≦ f (b) ≦ b, であることに注意すると, g (b) ≦ 0 ≦ g (a) となる. g (a) = 0 または g (b) = b ならば f (a) = a または f (b) = b ゆえ示される. そこでここでは g (a) ≠ 0 かつ g (b) ≠ b とすると, g (b) < 0 < g (a) となるので連続関数における中間値の定理より, ある c ∈ [a, b] で g ( c ) = 0 となる点 c が存在する. この c について f (c) - c = 0 であるから示される. ■
3の倍数(9の倍数)の判定の証明 4桁の自然数で証明するが、一般の自然数も同様に証明できる。 4桁の自然数は 1000a + 100b + 10c + d と表せる。 ここで a, b, c, d は 0 から 9 の整数で、a は 0 ではない。 1000a + 100b + 10c + d = 999a + 99b + 9c + ( a + b + c + d ) と変形すると前の部分は9の倍数なので3の倍数。 よって a + b + c + d が3の倍数なら元の数も3の倍数であり、9の倍数なら元の数も9の倍数。 この a, b, c, d は表れている数であるから、示される。